2017年12月21日木曜日

病棟でのうた時計

冬まっしぐら!
皆さまお元気ですか?

今日は聖路加国際病院の緩和ケア病棟で、
初めて演奏をさせていただきました。



聖路加はいつもお昼のコンサートでお世話になっていますが、
ご縁があって、月に一度の緩和ケア病棟でのミニコンサートに
行ってまいりました。

このお話を伺った時、
心が、ぜひやりたい、演奏したい、と
ものすごく訴えているのを実感し、
やっぱりうた時計は、
心から湧いて出たものなのだと
改めて思いました。

「無償での演奏というのは
他の音楽家を悪者にする。
あなたのように、CDを出して活動していたことがある人が
それをやっては絶対だめ。
お金をかけて学校へ通わせてもらったのだから
音楽で稼ぐことを考えなさい。
ボランティアは今すぐにやめなさい。」

うた時計を始めた頃、
高校の恩師にきつく叱られました。
先生のお話は正論です。
音楽で身を立てなければプロとは言えず、
両親にも申し訳ない。
ボランティアをしている時間があるなら
歌って稼ぎなさいというのは
正論です。
先生が私を想って下さるからこその言葉だということも
分かっています。

でも、
もし私の歌を必要として下さる方がいて、
コンサートへ行ける状態じゃないけれど
音楽を聴きたい、と思われるなら
そういう場所へ、
そんな方の元へ、
真っ先に行ける自分でいたいのです。
ただの、私のわがままです。

そして緩和ケアという、ご本人にもご家族にも大切な大切な時間に
必要としてもらえることは、
私の一番の目標であり、理想です。


祖母の介護をしていた時、
心に余裕がなくて歌えないので、
自分が歌った童謡唱歌の録音を流したことがありました。
その録音は、もともと父からの依頼で
遠方に住む病床の祖父へ歌を届けたいから、と
手持ちの録音機で録音してあったものでした。
当時Auraに所属していたものの、ソロでの歌い方には迷いがあり
学生時代に教わったベルカントとAuraでのノンビブラートの歌い方と、
なんともどっちつかずな有様で
自分としても、これで心が休まるのだろうかと
とても申し訳ない出来になっていました。
その時の私にはそれが精一杯で
録り直しても大して変わりませんでした。

祖母の介護をする中で、試しにそれを出して再生してみたところ、
1曲目が始まってまもなく
「うるせえ!消せ!」
と、、、
即時終了しました。
(↑語気が強いですが、方言のようなもので悪気はありません)

祖母の葬儀では、父母の意向でその録音を流していましたが
おばあちゃん、やだって言ってたんだけどな、、と
内心、祖母にとても申し訳なく思っていました。


数年後、訪問入浴介助のお仕事を始め、
在宅看護・介護をされる方々の所へ伺う中で、
緩和ケアをされている方の介助をすることもあり、
看護師さんのお手伝いをしながら、
利用者様と、ご家族と、お話をしながら、
こういう方の役に立ちたい、
祖母には最後まで出来なかったけど、
勉強した歌で、もし必要としていただけるならと
ずっとずっと思っていました。


そうしてはじめたうた時計。
トイスラーホールでの、お昼のコンサート。
そして今日。


高校の恩師はこうも言っていました。
「家族が病院で緩和ケアを受けていた時に、
ボランティアの演奏者が来てくれたんだけど
その演奏がひどかったの。
でも本人たちはすごく満足そうで、
私はそれがとても嫌だった。
そんな演奏家にだけはならないでほしい。」


そうなってはいけない。絶対に。
ずっとずっとそう言い聞かせて、迎えた今日。

ピアノの梶山ななえさんと、サックスの吉田充里さんと
トリオで演奏してきました。
ボランティアのコーディネーターの方をはじめ、
音域のことなど相談にのってくださった音楽療法士さん、
トイスラーでも見守ってくださる司祭様、
お医者さま、看護士さん、病棟ボランティアの方々、
そして、患者さま、ご家族のみなさん。

クリスマス効果もあったかと思いますが
当初の参加予定よりたくさんお集まりいただいたそうで、
ぜひまた来てくださいと、言って下さいました。



*演奏曲目*
Winter Wonderland(サックス&ピアノ)
The Christmas song(サックス&ピアノ)
ロンドンデリーの歌
アニー・ローリー
冬の星座
オンブラマイフ
この広い野原いっぱい
北の国から〜遥かなる大地〜
きよしこの夜(みなさんと一緒に)

*アンコール*
埴生の宿
まきびとひつじを



トイスラーで歌を聞いてくださっていた音楽療法士さんは
「佐藤さんなら大丈夫です!」
と、言ってくださり。

同じく以前トイスラーでお会いしていた司祭様は
リハーサルを聞いて、お部屋から出てきてくださり
「今日演奏されるんですか?ぜひ聞きにいきます」
と、言っていらしてくださり。

演奏後の帰り道、ななえさんと吉田さんが、
「やっぱり悦子さんの歌はいい」
と、言ってくださり。


大泣きでした。(みっともないので心の中で)


ななえさんや吉田さんのような、心の優しい、
誠実な演奏家の方と出会えたこと。
そうして自分の目指していることが、
今日、少し、できたのかもしれない、ということ。
お二人へも、そして出会わせてくれた何か目に見えない力にも
心から、感謝の気持ちで一杯です。

叱らせてしまった恩師にも
ただただ、感謝しています。


そして天国の祖母には
改めて、ごめんなさいと、
ありがとうを繰り返しています。


思い上がらず、ただ誠実に、
ひとつずつ、大切に、
努めてまいりたいと思います。